アスタキサンチン (astaxanthin, astaxanthine) は1938年にリヒャルト・クーンらにより発見された色素物質である。β-カロテンやリコピンなどと同じくカロテノイドの一種で、キサントフィル類に分類される。IUPAC名は 3,3'-ジヒドロキシ-β,β-カロテン-4,4'-ジオン。自然界に広く分布する。甲殻類の殻やそれらを餌とするマダイの体表、またサケ科魚類の筋肉の赤色部分などに見られる。名前はギリシャ語の "yellow flower" に由来するが、実際の色は赤色である。生体内では遊離型、モノエステル型、ジエステル型の3形態が可能であるが、多くは脂肪酸エステル型であり、血漿リポタンパク質と結合した形で存在する。甲殻類ではタンパク質(オボルビン、クラスタシアニン)と結合し、カロテノプロテインとして存在している。タンパク質と結合したアスタキサンチンは黒っぽい青灰色を呈するが、加熱によりタンパク質分子が変性してアスタキサンチンが遊離すると、本来の赤色を呈する。甲殻類を茹でると赤くなるのはこの現象に由来する。
構造
分子式は C40H52O4 で β-カロチンとほぼ同様の構造であるが、両端のシクロヘキセン環部位の水素が水酸基(3および3'位)とカルボニル基(4および4'位)に置換している。3および3'位の水酸基の位置により (3R,3'R) 体、(3R,3'S) 体(meso 体)、(3S,3'S) 体の三種が存在し、さらに分子中央の共役二重結合の cis-, trans- による異性体も存在する。
また、3および3'位に水酸基を持たない物質はカンタキサンチン(canthaxanthin, β,β-カロテン-4,4'-ジオン)と呼ばれ、これはフラミンゴが餌から摂取したアスタキサンチンを変換することで生成し、ピンク色の元としている物質である。
生理的役割
アスタキサンチンは、紫外線や脂質過酸化から生体を防御する因子として働いていると考えられる。
